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2014年07月05日(土) 
第三十二話「とらぽんとわけありマンゴーのファーストコンタクト」

「いわゆる『わけありマンゴー』なのよ。農家は本土に出荷できる規格の果実を収穫しようと頑張っているんだけど、どうしても大きすぎたり小さすぎたり、形が少し悪かったり、ちょっとキズがあったり、『ピンポン菓』のように生育に失敗しちゃったものが出てしまうの」。池間は専門家らしくマンゴーの樹の病気のことや果皮の色のり不足の原因など、出荷できない理由をいくつか列記した。「いけまさん、この美味しいマンゴーたちはどうなるんですか?。あらかたむぬ~(もったいない)!」とさと子が返すと、屋比久が大笑いして「宮古言葉が上手だね~。島の嫁さんにこんね♪。そうこれはあまりにもったいないので、島の人たちで食べてしまうんだ。うちではこうやっていろいろネットに入れて、お家の軒先で売ったり直売場に持っていくんだよ」。ネットには綺麗に色づいた大小3~5個の完熟マンゴーが収まっていて、ワンネット1500円だという。本土でわけありノンゴーを通販で入手する1/3くらい、贈答用と比べると1/5以下という激安価格で販売されていた。

「これなら貧乏なわたしの実家でも、お腹一杯マンゴーが食べられそう♪」とはしゃぐさと子に、妃佐子が「宮崎で食べるとすると、運送便の送料や果実の品質維持が課題かも」と現実的な質問を投げかける。「完熟贈答用は少し早めに収穫して常温で送りますが、わけありはもともと完熟度が高いので冷蔵便を使うんだよ。到着したらできるだけ早めに食してもらった方が味がいい。キズが入ったものの中には、食べるには支障はないが、輸送で若干痛むものもある」と屋比久が答えた。つまり、ワンネットやツーネットを送ったくらいでは、あまりメリットがないということだった。生産者としては、手間を掛けて無理をしてまで規格外の品物を送りたくないと気持ちがにじみ出ていた。少し暗い気持ちになりかけていたふたりに、泰子が「だったら『とらぽん』を使ってなんとかならないかな~」と投げかけた。とらぽんは泰子たちが共同購入クーポンを出品している地域SNSによる信頼のシステムである。

「待ってね..」と妃佐子がオリオンスリースターレギュラー缶のプルトップを開けてグビッと一口飲んでから語り始めた。この沖縄特産のビールは、いつの間にか仲良くなった屋比久が脇の冷蔵庫から妃佐子に手渡していたものだった。「状況を整理しましょう。少量ではメリットがないのである程度の注文数が必要。でもそれを個別に発送しては意味がない。だったらとらぽんで注文を取って、指定日にまとめて送ってもらい、購入者には美味しさが損なわれないようにできるだけ早く取りに来てもらう。販売量は屋比久さんたちが集められる数に制限しましょう!」。

一杯飲んだ妃佐子は凄い!。二杯飲ませたら神になるかも(笑)。「そんな絵に描いたようなアイデア、本当にうまくいくのかい?」と屋比久が疑問を口にすると、泰子とさと子が「心配ご無用!」と声をあわせた。共同購入クーポンは計画した最低購入数を上回らなければ売買が成立せず、購入者は予め生産者(出品者)の購入条件を理解して買うので、きちんとお互いのニーズとシーズがマッチングした商談しか残らない。また、完全成果報酬なので、販売前にも出荷御にも、リスクも負担がほぼ存在しない。今回のような生産者と消費者を互いに束ねてつなぐには、絶好の仕組みといえる。

「マンゴーを受け取る場所はこたつ先生のところの『ひょこむカフェ』があるよね。さとちゃん、ちょっとメールで聞いてみてくれない?」。妃佐子の言葉にさと子の顔が少し曇った。和崎先生のサイバー社会論だけが、前期で唯一ちょっと心配な科目だったからだ。さと子は勇気を出して、地域SNS「ひょこむ」で和崎にメッセージを送った。彼はレポートの採点もおわり前期の成績をつけて暇なのか、返事はみんなが完熟マンゴーに舌鼓を打っている間に届いた。

「じつにおもしろい!」。ガリレオの福山雅治を意識した書き出しだが、まったく似合っていない。次の行には「まだ言えないけど、いい成績で合格していたよ。よくがんばったね、おめでとう!」とあった。さと子は和崎が福山にダブってみえるような気がした(笑)。和崎のメールには「やるならみんなでわくわくするお祭りにしよう」というコンセプトで、詳しい実施計画案が記されていた。

わけありマンゴーを宮古でまとめてひょこむに送ってもらい「ひょこむマンゴー祭り」をやる。輸送で痛んだマンゴーはスイーツの材料にしてみんなで料理教室を開き作っていただく。キズのない綺麗なマンゴーはひとり2~3個を参加者のお土産にする。マンゴーに似合うトロピカルなライブをシンガーソングライターの梅谷陽子さんにお願いして気分を盛り上げる。スイーツを食べて完熟マンゴーを持ち帰る祭りの参加者募集と、その日に用事があって主席できないけど完熟マンゴーだけ受け取りに来る人と、募集チケットを2種類売り出せばうまくいく。この話しを聞いて、屋比久はすぐに近所の農園仲間に電話を入れて、ある程度の数のわけありマンゴーが確保できそうなことを確認した。

「泰子ちゃんは、もうウヤ(父)やアンナ(母)には逢ってきた?」と屋比久が訊くと、池間が「何言ってるの。空港から直接泰子を連れてきてと言ったのはお父さんじゃない」と笑った。泰子の実家は宮古島北西に浮かぶ池間島。1992年に1425mの池間大橋が架橋されて陸続きとなった元離島だ。池間島は、大橋の構造美、周囲に広がるエメラルドグリーンの海、その先に西平安名岬や大神島を望む優れた景観のため、宮古島を代表する観光地のひとつとなっている。宮古島側の橋のたもとには展望所があり、全日本トライアスロン宮古島大会のバイクコースの一部にもなっている。

「今夜はさるかの会の松原敬子さんや役場の平山茂治さんたちと一緒に、やすりんご一行歓迎のお食事会をする予定なの。これから泰子のお家に直行してご挨拶をすませて荷物を下ろしたら、妃佐子さんとさと子さんを連れてミニ観光ツアーをしてきます」と報告すると、屋比久は「松原さんと平山さんが揃うんだったら、わしがおらんわけにはいかんな~。母さんが帰ってきたら送ってもらうから、LINEに場所と時間をいれておいてくれよ」。宮古島のキーパーソンたちは、立場や取り組みが違っていても、みながゆるやかで良好な関係で繋がっているようだ。長い間、苦労を共にしてきた運命共同体と言える仲間たちが作るソーシャルネットワークは、島というほどよく閉じた環境の中で、強靱なソーシャルキャピタル(社会関係資本)としての役割を果たしていると思われる。

つづく

この物語は、すべてフィクションです。同姓同名の登場人物がいても、本人に問い合わせはしないでください(笑)

閲覧数700 カテゴリ日記 コメント0 投稿日時2014/07/05 05:22
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